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連載:エクイティーカルチャー − 異文化コミュニケーションとしての投資
第1回 株式投資は夢のある仕組み
小黒潤一(ジャーナリスト)

 「エクイティーカルチャー=株式文化」という言葉を耳にしたことがあるだろうか? 最近、イギリスの雑誌、economistが頻繁に使うこの言葉。この10年、投資信託という形で、株式や社債を当たり前のように持つようになったヨーロッパの人たちが、株式の所有を、投機的な、一時的な現象でなく進化ととらえ、文化の域にまで高めていきたいという願いが、この言葉には込められている。G7で、この文化に染まっていないのは、日本だけだということで、 外国人は、「Buy Japan 」と叫びながら、日本の株式を買い続けており、最近では、東京株式市場の取引の半分は外国人だと言われる程だ。この連載では、投資を異文化コミュニケーションとしてとらえ、その国境を超えた新しい文化を、地域研究としてGEO流に考える。

 投資が日本に文化として根付かないのは、マスコミと金融機関に大きな責任がある。 外務省の機密費問題で松尾容疑者が逮捕された時に、「松尾容疑者は、公費を『株や競走馬に使い』 」という表現が当たり前のように使われた。日本のマスコミでは、あたかも、株式は、競走馬に投資するのと同じギャンブルという文脈で語られてしまう。同様に、金融機関も、最近しきりに株式への投資を、リスクマネーと喧伝する。この不安定な時代に、わざわざリスクをとろうという発想をする人がいるのだろうか。金融機関が自分で自分の首をしめているにワーディングの典型である。エクイティカルチャーを理解するには、まず、預貯金と株式の違いが、リスクにあるのではなく間接金融対直接金融というシステムにあることを知るのが重要である。

 本来、直接金融というのは、「伸びてほしいな」とか「応援したいな」という会社に、銀行を介在させることなく金を託してみるという、非常に夢のある仕組みなのだ。

■参考)投資信託の残高 対GDP比 (99年)
フランス49% イタリア40% ドイツ39% スペイン33% イギリス29% 日本 10%
(ミューチュアルファンド・ファクトブック2000年版)

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updated:2001.08.18