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連載:エクイティーカルチャー − 異文化コミュニケーションとしての投資
第2回 大リストラ時代の株式投資
小黒潤一(ジャーナリスト)

 日本企業、というか、「21世紀日本がこけても我が社は生き残ろう」という「日本企業」が、本格的なリストラを始めた。東芝、富士通、日立、いずれも1万人を超える規模での人員削減を発表しており、これに対するマスコミの論調は、「終身雇用制の崩壊」と、軒並み悲観的である。

  悲観的になるのは簡単だが、この大リストラ時代に、個人は、どう対処すればいいのか。私は、「資格」というきわめて安直で胡散臭い方法ばかりが喧伝されるのでなく、投信信託やポケット株を利用した株式投資も、ひとつのリスクヘッジになることを、政府やマスコミはもっと知らせるべきだし、奨励すべきだと思う(*1)。

 というのも、株式市場では、会社の人員削減は、会社の非効率な部分の排除と受け止められ、長期的な株価上昇の重要な要因になるからだ。

 同時多発テロ事件後のニューヨーク株式市場。一週間で半値近くまで暴落したアメリカ航空関連株ですらも、アメリカン航空、ユナイテッド航空、ボーイングが、矢継ぎ早に2-3万人規模の人員削減策を打ち出すと、一時、反発局面を迎えた。

 「stake holder」という概念がある。「企業をとりまく利害関係者」という意味で、企業と個人の関わり方には、(1)従業員(2)消費者(3)株主(4)地域社会の4通りあるという概念だ。日本企業は、株式の持ち合いによって、(3)株主への責任を回避し、もっぱら、(1)従業員としての個人を厚くもてなすという企業戦略をとってきたわけだが、グローバル社会の中で、もはやこの方針維持は不可能と判断、冒頭の大リストラとなったわけである。となれば個人も、(1)(2)だけで企業と関わるのでなく、(3)(4)で企業からどう利益を得るのかを考えなければならない。アメリカが広めたグローバル資本主義というのは、とりあえず、そういう構造になっている。

*1 90年代ドイツ政府は、低所得者の株式や投信購入に一種の補助金をつけて、間接金融から直接金融への移行を進めた。

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updated:2001.09.29