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メルマガ/vol.05
2001.09.17 2001.9.17 |
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(1) 米国のテロ事件にて考える「協働のリスク」 荒木 裕一(アリックス・プロジェクト・マネジメント 代表取締役) (2) シンガポールの七不思議 勝間田 弘(英国バーミンガム大学大学院・在シンガポール) 町中に無数の星条旗がはためいています。未曽有の惨劇,そして米国の町中に掲げられた米国国旗を見て,様々な思いが去来しました。これについては,別途ここに執筆しようと思っています。 大規模テロ事件の発生当日このメルマガやメーリングリストで述べておいたブッシュ大統領の当日の行動については,米国時間本日のニューヨークタイムズ紙が,興味深い詳細なレポートをしています。 ウェブでも読めますのでご興味おありの方は,ご一読ください。 さて,本号のGEO Global Magaine,まずは企業のIPO(新規株式公開)プロジェクトプロデューサーの荒木裕一さんによる「協働のリスク」です。数多くの企業のサポートをされてきたご経験に基づく,今回のテロ事件を受けての非常に新鮮な視点からの論考です。 2本目は,国際関係の博士論文執筆のため現在シンガポールにて調査を進めていらっしゃる勝間田弘さんによる「シンガポールの七不思議」。エイズ検査も受けさせられた,などご自身が経験中のシンガポール社会の様子です。 GEO Global 代表 小田康之(サンフランシスコにて) ────────────────────────────────────── 最近一人で仕事をしていて思うのですが、今回のようなテロ事件があると”集まって仕事をするリスク”を経営上もっと計算すべきかなと思ってしまいます。 三菱村襲撃事件等テロ事件華やかざりし頃の日本からは結局このあたりのリスクマネージメントに関する提言はでず、労働上の集住(シュノイキスモス)が好きな日本的経営が貫徹されただけでしたが、どこが襲撃されても通信ネットワークを存在し続けられるシステム=インターネットを作った米国ですから、産業の時代の組織ではなくインフォメーションの時代に対応できる組織形態も考案していくのかもしれません。 人が組織で仕事をするメリットとして挙げられるものに”協働の利益”と”分業の利益”があります。 証券関係は幻想としての”協働の利益”というところが強く、今回もあの崩落したビルの一つに入っていたソロモンスミスバーニーの旧ソロモンブラザース華やかざりし頃の”ボウルルーム”のようなトレーディングフロアで伝説的トレーダーを中心としたトレーダー達が各々のマッチョを競い合うように腕まくりをしながら一瞬のうちに債券を売り切ってしまうことが理想的な絵みたいな感じが証券関係には未だあります。そこにあるのは一緒に集合して働き結果を出すというある意味”協働”幻想なのでしょう。 日本でも潰れた旧三洋証券の木場の事業所などそれを念頭に置いて作られたのだと思います。 日本企業のホワイトカラーの仕事効率の悪さが指摘され、”インターネットネットを使った仕事の効率性アップを追究すべきである”というどちらかというと表面的な議論が幅を利かせていますが、成果をだしてなんぼという成果主義、アウトプットマネージメントからもホワイトカラーの仕事というのはリスクマネージメントを絡ませて分業の利益を優先させる組織形態による事も考えるべき時期に来ているように思います。この手の組織形態を生かすのに必要なことは、そうした場合での評価方法の明確な定義かなとも思うのです。SOHOとかいうのではないのですが... 今回のようなテロ事件は普遍的主義主張を争う20世紀の”文明の衝突”的争い形態としての軍事力の行使に対して宗教とか言語とか個別の”文化の衝突”と考えた場合、21世紀的な軍事力の行使に対してどうのように向き合っていくかという問題のような気がします。 そしてこれって文化に根ざすだけに人間の習慣とかべったりした人間的な面に目を向けた方法論の再定義かなとも思ったりします。 軍事面から観た場合も”軍事革命”という名前ですでにコソボの戦いで始まっているそうですが、今回のテロ事件もその一つの類型にあり、それは軍事の上での21世紀の課題の”文化の衝突”にすぎないのかもしれません。 大集団としての組織で仕事をすることのリスクと”一人一人を組織する組織論”の必要性、そういう予感を与えてくれる事件です。 ゴチャゴチャした日々の生活と生活の糧を得るという仕事をどのように効率的にマネージできるかという課題です。 ”異化する時間”としてのワーキングタイムの設定はオフィスに通勤することによって達成され、一箇所でミーティングすることでその協働効果が上がるという、効率性を保証するという優れた文化的マネージメント・システムなのかもしれませんが、通勤する、一所に集まって仕事を協働する事のリスクが限りなく大きくなった場合、異なった形式による協働・分業としての仕事形態が要求されるのかもしれません。 そういう予感を持ちました。 【筆者プロフィール】 ────────────────────────────────────── シンガポールというのは面白い国です。1965年に独立した人口およそ300万人の都市国家は、今日では東南アジア随一の経済発展を誇っています。小さな社会がわずか数十年で目覚しい発展を遂げた背景には、社会の隅々にまで行き届いた強い政府の管理があります。社会を良くするために、様々な規制やルールを通じて、政府が国民生活の一部始終をコントロールするのです。 ごみを捨てたら罰金、公衆トイレで流さなかったら罰金、チューインガムは町を汚すので禁止、といった厳しい規制を耳にしたことがある方も多いでしょう。このたびはシンガポール在住中の筆者が、この国独特のルール、珍しい社会事情をお伝えします。以下に七点、シンガポールの七不思議です。 ▼其の一 小学生向け刑務所見学ツアー シンガポールには刑務所見学ツアーがあります。もちろん、犯罪者が服役している本物の刑務所です。主な対象は学生。目的は、子供のうちに罪を犯すとどうなるかを見せておくことにより、将来の犯罪を抑止するというものです。 例えば、小学生が軽い犯罪をしたとします。子供ですから、大人と同じ刑罰の対象にはなりません。しかし、その子供は刑務所見学ツアーに参加させられます。二度と罪を犯さないように、犯罪者が罰せられている現場で恐怖心を植えつけられるのです。 ▼其の二 レンタルビデオがない社会 この国には、レンタルビデオ店がほとんどありません。レンタルビデオが禁止されていて店が一軒もないという訳ではありませんが、運営が難しいので出店する人がいないのです。外国から入ってくる映画は、必ず政府の審査を受けなければなりません。不適切な映像や発言の管理が目的です。レンタルビデオ業を営むとなると、一つ一つの映画について政府への手続きがあり、金銭的、時間的に膨大なコストがかかるそうです。したがって、レンタルビデオ店を開く人がいないのです。 ▼其の三 留学生にはエイズ検査 半年以上この国に滞在する留学生は全員、エイズ検査を受けさせられます。シンガポール大学に留学中の私も例外でなく、学校に来てすぐに受けました。検査を受けなくては、学生用の滞在許可を申請できないのです。学生は皆、問題なしという検査結果をもって出入国管理局に滞在許可をもらいに行きます。なお、好ましくない検査結果がでてしまったら滞在許可が下りないので、出国しなくてはなりません。外国からは、人権問題に関わるという批判が相次いでいます。しかし、これがシガポール流の社会を良くする手段。従うしかないのです。 ▼其の四 ワンルームマンションのない国 一人でシンガポールへ来た私のような外国人が最も困るのが、部屋探しです。この国には、単身者向けの小さな部屋、日本で言うワンルームマンションがないのです。シンガポールの住宅の半数以上が、政府が作るマンションです。これは、小さいものでも二、三の部屋があるタイプ。また、民間業者が作るコンドミニアムでも、ワンルームというのは見たことがありません。 この理由は、儒教思想にあります。この国では儒教思想が行政の様々な側面に反映されていますが、これが一例です。家族を重んじる思想にもとづき、政府は家族がまとまって住むことを奨励している。だから、単身者向けの住宅は作らないのです。 ▼其の五 電車内での携帯はOK そう、どういう訳だか、電車の中での携帯電話はOKなんですね。日本でも禁止されていることなのに、規則の多さで有名なシンガポールでもこれだけは許されています。電車の中や駅構内での飲食は厳禁なので、ホームでジュースを飲んでいる人すらいません。車内には、ごみが一つも落ちていません。それなのに、車内のうるささだけは大変なものです。あちこちでリンリン鳴りまくり、皆が大声で携帯に向かって叫んでいます。通信産業の促進、電話好きの中国人文化…。いったい何が理由なのでしょうね。 ▼其の六 トヨタ・カローラが六百万円 シンガポールは小さな国ですが国民は豊かです。皆お金があるので、車を買いたがります。しかし皆が買うと、あっという間に町は車であふれてしまいます。そこで政府は、車の量を抑えるために、多額の税を設定しています。新車購入時の税金は何と二百パーセント。それからさらに多くの雑費、諸経費がかかります。結果、車の価格は日本の三倍以上になってしまうのです。 例えば、庶民に親しまれる筈のトヨタ・カローラや日産サニーが、六百万円以上してしまいます。日本では高級車が容易に買える値段ですね。それでも車はシンガポール人に大人気で、町は新車でごった返しているから驚きです。 ▼其の七 学生寮での男女の距離 何しろ管理の行き届いたお堅い社会です。大学の寮も建物が男女で分かれていて、門限が厳しくて、なんていうのを予想する方がいたら、それは間違いです。大学の学生寮は、男女の交流が容易になっています。同じ建物の中で下の階が男子、上の階が女子と分かれており、その間の往来は全く自由です。門限もありません。 学生寮での男女の距離が近いのは、政府の企てだと言われています。端的に述べると政府は、高学歴者同士で恋愛し、将来は結婚・出産してほしいのです。先進国では出生率の低下が問題になっていますが、シンガポールでも同じです。特に高学歴者の結婚、出産が減ってきています。 そこで政府は、高学歴者を促すのに必死です。多くの子供を産んだ高学歴者への財政的支援といった政策は一例です。高学歴者ほど優遇という呆れてしまいそうなこの政策も序の口。大学の寮のつくりさえも、高学歴者の結婚・出産を狙ってのものなのです。シンガポールらしいと思いませんか。 以上の七点の他にも、シンガポールには面白いことがたくさんあります。住めば住むほど興味が沸いてくる社会。皆さんもぜひ一度、訪れてみてください。 【筆者プロフィール】 |
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updated:2001.9.18
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