アーカイブ/中東・北アフリカ
マグレブに関する文献リスト
(特にアルジェリア・モロッコ)関係
小池 利幸
 専門的なマグレブ関係の参考文献は、そのほとんどがフランス語・アラビア語を中心とした外国語で書かれているので、ここでは日本語で書かれた基本的なもののみを取り上げることにします.

● 歴史及び概説書

1) 宮治一雄(1978) 『アフリカ現代史X 北アフリカ』、山川出版社.
2) 加藤恒男(1984) 『もうひとつのイスラム革命−アルジェリア遍歴−』、日本貿易振興会.
3) 淡徳三郎(1972) 『アルジェリア革命』、刀江書院.
4) アリステア・ホーン(北村美都穂訳)(1994) 『サハラの砂、オーレスの石−アルジェリア独立革命史−』、第三書館.

(1) はアルジェリア・モロッコ・チュニジアの三国を中心に、リビア・モーリタニアまでの通史を理解するのに役立つ.(2) はアルジェリア現代史と社会構造、(3) と (4) はアルジェリア革命前後が詳しく、特に (4) は人物関係などがよくわかる.

● アルジェリア革命運動に関する文献

5) 松村剛(1962) 『アルジェリア戦線従軍記』、中央公論社.
6) 湯川赳男(1969) 『トロツキズムの史的展開』、三一書房.
7) フランツ・ファノン(宮ヶ谷徳三他訳)(1969) 『革命の社会学』、みすず書房.
8) フランツ・ファノン(鈴木道彦他訳)(1996) 『地に呪われたる者』、みすず書房.

(5) は生々しいアルジェリア独立戦争の記録、(6) はアルジェリアのみならず、世界中のトロツキズムの展開が非常に簡潔にあらわされている.また、(7)、(8) は黒人でありながらフランス人である著者の視点から、鋭く植民地体制を批評した名著.

● アジア経済研究所系の文献

9) 福田邦夫 「アルジェリア社会主義の再検討」、 《清水学編『アラブ社会主義の危機と変容』(1992)》.
10) 鹿島正裕 「マグレブ諸国の国家体制−アルジェリアとチュニジアにおけるその変容−」、《伊能武次編『中東における国家と権力構造』(1994)》.
11) 宮治一雄 「アルジェリアの公共部門と構造改革政策」、《関根英一編 『中東諸国の経済政策の展開』(1988)》.
12) 堀内正樹 「モロッコにおける聖者をめぐる社会意識」、《加納弘勝編 『中東の民衆と社会意識』(1991)》.
13) 宮治一雄 「アラビア語化とベルベル運動−アルジェリア−」、《宮治一雄編 『中東のエスニシティ−紛争と統合−』(1987)》.

それぞれ興味深い考察であるが、そのなかでも特に (13) が現在のアルジェリア危機の裏に隠れた民族問題の本源に近づくための良書.

● 国家体制とイスラームの関係(いわゆるアルジェリア内戦について)

14) 宮治一雄 「アルジェリアの国家体制とイスラーム」、《山内昌之編 『イスラム原理主義とは何か』(1996)》.
15) 私市正年 「反体制と体制のはざまで−アルジェリアとモロッコ−」、《小杉泰編 『イスラームに何がおきているか』(1996)》.
16) ジョン・L・エスポズィート(内藤正典他監訳)(1997) 『イスラームの脅威』、明石書店.

(14) はいわゆるアルジェリア内戦に至るまでの国家体制について、(15) は似たような社会状況持つアルジェリアとモロッコの比較、そして (16) はアルジェリアだけでなくイスラーム社会と西洋の関係についての書.

● 都市研究の文献

17) 陣内秀信(1995) 『都市の地中海−光と海のトポスを訪ねて−』、NTT出版.
18) 今村文明(1998) 『迷宮都市モロッコを歩く』、NTT出版.
19) 羽田正他編(1991) 『イスラム都市研究−歴史と展望−』、東京大学出版会.

(17)、(18)は写真や挿絵が多く非常に読みやすいので、現地に行く前に目を通していくとよい.(19) はマグレブだけでなく、イスラーム社会全体の都市空間を考察しているかなり本格的な書.

● ヨーロッパにおけるマグレブ系移民問題関係の文献

20) 内藤正典(1996) 『アッラーのヨーロッパ−移民とイスラム復興−』、東京大学出版会.
21) 林瑞枝(1984) 『フランスの異邦人』、中央公論社.
22) 梶田孝道(1993) 『新しい民族問題−EC統合とエスニシティ』、中央公論社.

この三冊はどれも非常に読みやすいうえに、内容が濃いのでお勧め(特に(20)).

● その他

23) 私市正年(1996) 『イスラム聖者−奇跡・予言・癒しの世界−』、講談社.
24) 大塚和夫編(1998) 『アジア読本−アラブ−』、河出書房新社.
25) 澤田直 「マグレブのフランス語文学−裏切りと歓待−」 《三浦信孝編 『多言語主義とは何か』(1997)、藤原書店》.
26) ピエール・ブルデュー(原山哲訳)(1993) 『資本主義のハビトゥス−アルジェリアの矛盾−』、藤原書店.
27) 『ビジュアルシリーズ・世界発見2−北アフリカ・アラビア半島−』(1992)、同朋舎出版.
28) 赤地経夫撮影(1986)写真集『モロッコ・辺境の光』、六興出版.

(23) は、聖者信仰の盛んなマグレブ地域を考える際に有効、(24) はマグレブを含めた多くのアラブ地域研究者達の手による短編論文(エッセイ?)集で興味深い.また、(25) は植民地文学の研究に関するもの、そして (26) は著名なフランス人社会学者によるアルジェリア社会構造の考察の書であるが、非常に難解.(27)、(28) はフルカラーのもので、特に (27) は簡単な各国の歴史やデータが載っており入門に最適.

小池利幸氏プロフィール
1972年、大分生まれ.青山学院大学文学部仏文科及び経済学部経済学科卒業後、東京外国語大学大学院地域文化研究科アジア第三専攻地域研究コース博士前期課程に入学.現在、同研究科同課程に在籍中.高校時代より世界中を旅してまわり、一番気に入ったマグレブを中心とした地中海地域研究を志す.
 現在、アルジェリア独立戦争前の同国における民族主義運動とイスラーム主義運動の関係を考察中.また、現代のフランスにおけるマグレブ系移民問題にも関心あり.ゆくゆくはこれらの研究を通じて、現在のアルジェリア内戦の多角的な分析を行いたい.そのため、1999年2月からモロッコに留学.
メールアドレス;PXS04000@nifty.ne.jp

updated:2002.2.10