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英語とのつきあい方
(5)何をどう聴くか −使って便利なリスニング用小道具−
小田 康之 (GEO Global 代表・在サンフランシスコ)

最新版は外国語広場をご覧ください。

 みなさんは、英語学習の録音・再生のために何をつかっているだろうか。さすがに日本ではカセットテープのウォークマンを使っている人は、石器時代からタイムスリップしてきたような印象すら与える昨今だが、MDを使うというのは一般的ではないだろうか。

外国語の学習で何にもまして重要なのは「繰り返し」という作業であるから、録音装置の良し悪しは外国語の習得に大きな影響を与える。もちろん良い道具が魔法使いの杖のごとく万能なわけではないが、肝心の学習そのものにより多くの時間を割くことができるように、道具を整え、使いこなすことは意味あることだろう。

 今回は、リスニングに役立つ携帯プレーヤーやソフトウェア、時事的話題の面白い英語番組をご紹介しようと思う。


▼語学学習に便利な携帯MP3プレーヤー

 Windows版が発売されたアップルのiPodの登場で、ハードディスクプレヤーが俄然熱くなってきた。数GBや数10GBというハードディスクに音声を詰め込むため、大量の楽曲や長時間の音声を気軽に持ち運べることが特色だ。
<http://www.apple.co.jp/ipod/>

 私自身は、大量のCDを持ち運びせずに聞く手段として、以前からCreative Nomadのハードディスクプレヤーを愛用している。

 ハードディスクプレーヤーは、長時間録音(音声以外のファイルも保存可能)の点では申し分ないのだが、起動にやや時間がかかるのが語学学習用には気になる。

 すぐに立ち上がり使い勝手が良いものとしては、メモリーカードや内蔵メモリーを記録用に使用するプレーヤーが便利だ。一般的にMP3プレーヤーとかシリコンオーディオプレーヤーなどと呼ばれるものだ。

 私が最近手に入れてとても重宝しているのが、サンヨーのデジタルボイスレコーダー(ICR-B80RM、実売価格2万円程度)だ。これは、MP3プレーヤーとしての機能とボイスレコーダーの機能の両方を持っている。録音方式はMP3(ファイル形式については後述)なので汎用性が高いうえ、USBのジャックが本体についており、ドライバーをインストールせずともそのままPCのUSBポートに差し込めば、PCとデータのやり取りが簡単にできる。PCに保存してあるMP3形式の音声ファイルをたやすくこのレコーダーにコピーして聞くことができるわけだ。ボイスレコーダーの機能もあるので、会議などをMP3形式で録音することもでき、本体をUSBポートに差し込んで録音した音声をPCに保存できるのだ。難点は、記憶容量が内蔵メモリーの64MBしかないこと。64MBというと、CD並みの高音質で記録すると音楽CDのアルバム1枚が入る程度の容量に過ぎない。
<http://www.digital-sanyo.com/sts/ICR-B80RM/index.htm>

 同じようにUSBポートに本体を差し込むだけで使えるプレーヤーで便利なのは、CreativeのMuvo(ミューボ)だ。これも内蔵メモリーだけだが、64MBと128MBの2つのタイプがある。マッチ箱程度の小ささなので、シャツのポケットにいれても気にならない。
<http://www.muvo.com/><http://www.zdnet.co.jp/news/0207/23/nj00_muvo_creative.html>

 その他、さまざまなMP3プレーヤーが発売されているので、自分の使いやすいものを選ぶと良い。音楽用のため著作権管理機能が複雑な製品も多いが、語学学習用にはなるべくシンプルなものを選んだほうがよい。ポイントとしては、ファイル形式はMP3対応、メモリー容量はCD並み音質で1時間以上の音声を続けて聞きたい場合は64MB以上(メモリーカードで増設できない場合)、USB接続などで簡単にファイルをPCとの間で転送できることなど。

 また、PDA(携帯情報端末)にもメモリースティックやSDカードなどのメモリーカードに音声ファイルの記録再生ができるものが多くなった。ファイル転送や操作に少々手間がかかるケースが多いが、すでにメモリーカード対応のPDAを使っている人には、新たな機器が増えずに済むという利点はあるだろう。


▼乱立するファイル形式、おすすめはMP3

 注意しなければいけないのは、録音をするときのファイル形式だ。Windowsの標準の音声形式では、WAVEというファイルになる。Macでは、AIFF。だが、WAVEのままでは、CD並みの音質で録音すると1分当た10MBにもなってしまう。これでは、ファイルの容量が大きすぎ実用的でない。そのため圧縮が必要になる。圧縮には、さまざまな形式が乱立しているが、ダウンロード用としてもっとも広く使われている使われている形式がMP3(MPEG1のAudio Layer3)といわれるものだ。拡張子が mp3 となる。

 MP3で圧縮すれば、WAVEファイルはおよそ10分の1、つまり1分当たり1MB程度になる。外国語の学習用としては、音楽のような高音質は必ずしも必要ないので、低いビットレートで圧縮すればさらに小さな容量にすることが可能だ。

 MP3よりも高圧縮なWMA(ウィンドウズ・メディア・オーディオ)やソニーが提唱するATRAC3、音質に定評のあるAACなどさまざまな圧縮形式があるが、対応しているプレーヤーの数や汎用性を考えると、外国語学習用としては、私はMP3で音声を保存しておくことをおすすめする。

 CDからPCに音源を取り込むCDリッパーとWindowsの音声形式 WAVE(拡張子 wav)をMP3に圧縮するエンコーダーにはさまざまなソフトがあるが、両方の機能を同梱した無料ソフトとして使い勝手のよいものとしては、CDex というソフトがある。
<http://www.cdex.n3.net/>

 語学講座のCDもCDexなどのMP3作成ソフト(CDリッパー+MP3エンコーダー)を使ってPCにMP3形式で保存しておくと活用の幅が広がる。モーターで駆動するCDプレーヤーを携帯するよりもMP3プレーヤーを持ち歩くほうが小型軽量で扱いやすい。ハードディスクに保存しておけば場所もとらない。


▼ネット放送録音に便利なソフト"Total Recorder"

 せっかくインターネットで外国語放送を聞けても、その多くは直接保存のできないストリーミング形式だ。もちろんPCとケーブルでつないでMDやカセットテープに録音することはできるが、これでは不便この上ない。

 そんなときに威力を発揮するのが Total Recorder という米国のソフトだ。これを使うと、ストリーミングのインターネット放送を簡単にPCに録音保存することができる。PCで扱う音源ならば何でも録音可能なので、自分の声をマイクでPCにつなぎハードディスクに録音することもできる。無料版は40秒ほど録音できるのでまずはダウンロードして試してみると良い。11.95ドルほどをオンラインで支払って登録すると、シリアル番号が送られてくるので、それをソフトに入力すると録音の時間制限がなくなる。

 ライセンス料の関係で、このTotal RecorderそのものにはMP3のエンコーダー(圧縮機能)が入っていない。すでに別のソフトにMP3エンコーダーが入っていればそのままで圧縮保存できるはずだが、もしなければウェブ上の説明を参考にダウンロードして組み込もう。

 Total Recorderを使えば、自分の声もマイクを通じて録音することができる。これは、自分の発音の確認や同時通訳の訓練などに威力を発揮する。

 新たな単語を覚えるには綴りとともに正確な発音を覚える必要がある。自分で発音をしたものをMDやテープにとって独自の単語集を作っている人もいるが、TotalRecorderとネット上のオンライン辞書で音声のあるものを利用すればネイティブの発音による独自の単語集を作ることも手軽にできる。

 Total Recorderは、音声の途切れの部分は記録されないので、ストリーミングが途中で途切れ途切れとなっても心配ない。単語集を作るときも録音モードにしたまま単語の音声をReal PlayerやWindows Media Playerなどで次々再生すれば、単語の音声の部分のみ連続して再生される。逆に空白のポーズがないので、音声単語集を作る場合は数回繰り返して録音するようにしておくのが良いだろう。

Total Recorder (Standard EditionでOK)
<http://www.highcriteria.com/>


▼ニュースのネット放送、MP3によるダウンロードニュース番組

 米国の公共ラジオ放送局NPR は、多彩な番組をネットで無料配信している。特にニュースや解説番組が充実している。私は米国にいるときには、NPR(各地ではNPRのそれぞれの加盟局が放送)の Morning Editionというニュース解説番組を目覚まし代わりに起床する。ニュースや話題のテーマを、それぞれのテーマごとに手短にまとめてくれるので、便利だ。この番組もネット上でセグメントごとあるいは番組全体を一括して、配信されているので、いつでも聞くことができる。
 ストリーミングだけだが、先に紹介したTotal Recorderででも録音し、MP3プレーヤーで通勤途中に聞くのもいいだろう。

NPR ホームページ
<http://npr.org/>
NPR:毎時の5分ニュース<http://www.npr.org/audiohelp/hourlynews.html>
NPR: ニュースページ(オンデマンド)<http://news.npr.org/>

NPR: Morning Edition (Experience by segment をクリックするとセグメントごとに聞くことができる。 Previous Shows で過去の番組の膨大なアーカイブも。)
<http://www.npr.org/programs/morning/>

 同じくNPRの All Things Considered や Talk of the Nationも平日毎日放送されている時事的なテーマの討論番組だ。リスナーが電話でゲストに質問するコーナーもある。これらの番組も過去のアーカイブをウェブでいつでも聞くことができるので、興味のあるテーマやゲストの時にはぜひ聞いてみるといいだろう。その分野の専門家として招かれるゲストには、著名な人が多い。

NPR: All Things Considered
<http://www.npr.org/programs/atc/>
NPR: Talk of the Nation<http://www.npr.org/programs/totn/>

 そのほかにもNPRには、Terry Grossによるハリウッドスターから学者まで様々な分野の著名人を招いたインタビュー番組 Fresh Air や自動車に関するリスナーからの電話による質問に答えながら軽妙で抱腹絶倒のトークを繰り広げる CarTalk などウェブで聞くことのできる番組のラインナップも豊富だ。

NPR: Fresh Air (サーチボックスに好みの俳優や作家など著名人の名前を入れて検索すると、過去に出演した場合はヒットするので、アーカイブで思わぬインタビューを聞けることがある。)
<http://freshair.npr.org/>
NPR: Car Talk<http://cartalk.cars.com/Radio/Show/>
NPRと母体が同じ公共テレビ局PBS のウェブサイトでは、看板番組でもあるNewshourの音声と映像が公開されている。トランスクリプトも同時に読むことができるので、英語の勉強にもとても利用価値が高い。
PBS: Newshourのインデックスページ
<http://www.pbs.org/newshour/newshour_index.html>

 ニュースの音声では、Voice of AmericaやイギリスBBCのウェブサイトが充実している。これら2局は、多国語で放送しているので、英語以外の言語を勉強する場合にも便利だ。

Voice of America News 英語ページ
<http://www.voanews.com/index.cfm>

BBC World Service(World News Summaryなど)
<http://www.bbc.co.uk/worldservice/>

 いちいち録音するのが面倒だという場合には、MP3形式でニュースがダウンロードできるサイトもある。BBCとPRI(Public Radio International)そしてWBGH Bostonによる共同制作番組 The World では、過去5日間までのニュースがMP3形式でダウンロード可能だ。Voice of AmericaのウェブサイトでもMP3でダウンロードできるニュースが多数公開されている。

The World
<http://www.theworld.org/>

 これらのMP3形式のニュースを出掛ける前にダウンロードの上、携帯MP3プレーヤーにコピーして持ち歩ければ、新聞を読むことすら難しい東京の通勤ラッシュでも充実して過ごせることだろう。


【筆者プロフィール】
小田康之:略歴は、下記のページをご参照ください。
<http://yasuoda.com/ja/ryakureki.htm>

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updated:2002.10.27