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英語とのつきあい方
(6)ネットで講演を聞く
小田 康之 (GEO Global 代表

最新版は外国語広場をご覧ください。


【文中に登場するサイトへのリンクは文末にまとめてあります。】

 講演を聴くのは楽しい。専門家から直接学べることに加えて、話の運び方やプレゼンテーションも観察できるからだ。気の利いたジョークででも話を始めてくれれば、あわよくば自分が話すときにも拝借させてもらおうという下心も働く。

 でも、これがまるでつまらないスピーカーだったりしたら最悪だ。話を聞いた時間だけではなく、会場まで足を運んだ時間と労力も無にしてしまうことになる。

 その点、ネットで好きな時に講演を聞けるのは、便利この上ない。質問をしたり会場の雰囲気を感じたりすることはできないものの、聞くに堪えない講演なら、プレーヤーソフトをオフにするだけで済む。


▼一石二鳥で英語を学ぶ

 日本ではネット上で公開されている講演は、まだまだ数少ないのが残念だが、米国のサイトは講演の音声を聞いたり映像を見たりしたい者には、まさに宝の山。ただで専門家の話を聞けると同時に、英語も音声で学べるという一石二鳥だ。

 私がよく利用するのは、サンフランシスコを拠点とする Wolrd Affairs Council と Commonwealth Club。政治家、経済人や文化人などの講演のアーカイブをReal Playerで聞くことができる。その数は膨大である。

 米国で本を出版すると、そのプロモーションとして、著者は全米各地を講演行脚することになる。講演会の多くは、そのプロモーションの意図が強いが多いが、著書のポイントをうまくまとめてくれていることも多いので利用価値は高い。

 Commonwealth Clubのサイト上にある、CNNのLarry King Liveで世界中に知られるラリー・キングの講演も著書のプロモーションもための講演だが、著書の内容にはほとんど触れず、抱腹絶倒のトークを繰り広げる。これはこれで面白い。


▼ジュリア・ロバーツが演じた本物の『エリン・ブロコビッチ』

 私の好きな映画に『エリン・ブロコビッチ』("Erin Brockovich")がある。ジュリア・ロバーツがアカデミー賞の主演女優賞を受賞したことでも有名で、実在の女性の名前を、そのままタイトルにした映画だ。2度の離婚を経験し、3人の幼い子供を抱え、借金まで背負い失業したシングルマザーのエリン・ブロコビッチが、法律事務所の調査担当として電力・ガス会社の公害隠蔽を暴き、巨大企業の横暴と闘う過程を描く実話をベースにしている。

 この実物のエリン・ブロコビッチの講演もCommonwealth Clubで聞くことができる。本人が映画の98-99%は現実どおりだというだけあって、講演会での彼女は、ジュリア・ロバーツが映画で演じた人そのものだ。質疑応答では、ブロコビッチ節とでも言うような、彼女の開けっぴろげで熱い語りが炸裂する。映画を見てからぜひとも聞いていただきたい講演だ。


▼充実する米国の大学ウェブサイト

 米国の大学のウェブサイトも、学者、政治家、文化人などのスピーチが溢れている。試しに、ハーバード大学のケネディ行政大学院のサイトを開いてみよう。圧巻の大物たちの公開対話や講演の映像を見ることができる。

 先ごろIBMの復活劇の舞台裏を明かした著書を上梓したIBMのルー・ガースナー会長との対話。キューバ危機40周年のフォーラムでは、なんと『決定の本質』で著名な政治学者アリソン(元ケネディ行政大学院学長)が司会をしてマクナマラとソーレンセン(ケネディのブレイン)と対話をするフォーラムもそっくり見られる。元財務長官として信頼の高かったロバート・ルービン。ガルブレイスやチョムスキーのような言論人としても名の知れた人たちの名前も並ぶ

 これらは、以前はケンブリッジ(ボストン郊外)に行かなければ聞けなかったわけだが、今やネットで無料公開されているので、時間も場所も関係なく聞くことができる。

 ネットのブロードバンや常時接続の広がりで、英語による講演のサイトはますます利用価値大だ。


■Wolrd Affairs Council of Northern California
<http://www.wacsf.org/>
サンフランシスコを拠点として国際問題に関係する講演会を開催。スピーカーには、著名人が多い。マルチメディアのアーカイブページからは、過去の講演会の音声を聞くことができる。世界の地域、カテゴリーなどでも分類。

■The Commonwealth Club of California
<http://commonwealthclub.org/>
サンフランシスコを拠点としてさまざな公共問題に関する講演会を開催。アーカイブページから各年の講演会の音声を聞くことができる。音声とともにトランスクリプトが掲載されている講演も多い。ブッシュ大統領やアル・ゴアをはじめ政治家や経済人、文化人などの著名人が多数講演。

■Harvard University -Kennedy School-Institute of Politics
<http://www.iop.harvard.edu/forum-archives.php>
フォーラムの映像。米国政治の中枢を担っている人物(当然ここでは民主党系が多いが)や著名文化人の公開対話を多数聞くことができる。マクナマラ、ソーレンセン、ガルブレイス、ハルバースタム、チョムスキー、ジョージ・ソロス、グラハム・アリソン、ジョセフ・ナイなど。

■Council on Foreign Affairs: Video Foreign Affairs
<http://www.cfr.org/press/policy/video1.php>
誌を発行する外交評議会の講演会の映像とトランスクリプト。映像は一定の期間が過ぎるとサーバーから消える。米国の有力政治家、経済人、外国の政治家などが講演。小泉首相も英語で講演を行った。

■C-SPAN <http://cspan.org/>
政治過程の公開を目指す目的で米国のケーブル局により非営利で運営されているテレビ局。ネットでも中継をすると同時に、最近の放送はアーカイブで見ることができる。議会の公聴会のほか、さまざまな演説やスピーチを見ることができる。

■Johns Hopkins University -SAIS
<http://www.sais-jhu.edu/>
国際関係の大物スピーカーによる講演。音声や原稿、スライドなど豊富な記録。トップページに掲載された講演より前のアーカイブページ。

■Carnegie Endowment for International Peace: Video & Audio
<http://www.ceip.org/files/events/video.asp>
"Foreign Policy"誌を発行するシンクタンク。国際関係の講演やフォーラムの映像と音声。ムバラク大統領、トーマス・フリードマンなど。

■Carnegie Council on Ethics and International Afffairs: Speeches Index
<http://www.cceia.org/about/speeches.html>
講演のトランスクリプトが中心だが、音声のある講演も。ジョセフ・スティグリッツ、フランシス・フクヤマなど。

■CATO Institute
<http://www.cato.org/realaudio/audiopages.html>
リバタリアン系のシンクタンク。イベントアーカイブには、過去の講演の映像と音声が大量に。経済学者ミルトン・フリードマンの映像集なども。

■Heritage Foundation: Event Archive
<http://www.heritage.org/Press/Events/archive.cfm>
保守系のシンクタンク。過去の講演の映像。

■Democracy Now!
<http://www.democracynow.org/>
リベラル系ラジオ、テレビ放送。音声アーカイブ。ノーム・チョムスキーなど。チョムスキー講演(at MIT)9/11テロ・米国外交政策批判 2001年10月 Part1, Part2

■Harvard Law School Forum
<http://www.law.harvard.edu/studorgs/forum/audio.html>
1954年から2000年までの講演の音声。マーティン・ルーサー・キング、ピーター・ジェニングス、ラルフ・ネーダーなど。

■Harvard Law School: Saturday School Program
<http://www.law.harvard.edu/students/saturday_school/video_archive.shtml>
黒人、人種差別をテーマとした講演の映像。毎週追加。ジェシー・ジャクソン、アニータ・ヒルなど。

■MIT Communications Forum
<http://web.mit.edu/comm-forum/forums.html>
コミュニケーションに関係するテーマによる講演会。ホワイトハウス付き記者Helen Thomasなど。

■UC Berkeley Lectures and Events
<http://lib.berkeley.edu/MRC/audiofiles.html>
著名文化人の講演会の音声や映像。ミシェル・フーコー、ウンベルト・エーコ、ノーム・チョムスキー、カルロス・フエンテス、マーガレット・ミード、レビストロース、オッペンハイマー、マルコムX、クリントンなど。

■Earth Policy Institute: Lester Brown講演
<http://www.earth-policy.org/Transcripts/>
環境問題で著名なレスター・ブラウンの講演トランスクリプト集。講演によって
はリンク先のサイトに音声あり。

■Wake Forest University- MBA
<http://www.mba.wfu.edu/news/newsaudio.htm>
ビジネススクールのゲスト講演。デルのMichael Dellなど。音声と一部映像も。

■The Barton Lectures on Radio National
<http://www.abc.net.au/rn/sunspec/barton/>
オーストラリア "The One and the Many: Unity and Diversity in Australia"をテーマとした10回の講演シリーズ。2001年2月−4月。音声とトランスクリプト。

【インタビュー番組】
■Booknotes.org: Archive
<http://www.booknotes.org/archives/>
C-SPANで放送されている番組の映像アーカイブ。歴史、政治や社会一般を扱った話題の本の著者へのインタビュー。映像とともにトランスクリプトも公開。年ごとに一覧をブラウズするか、好みの著者や書名をサーチボックスにいれて検索してみると良い。

■The Connection: Archive
<http://www.theconnection.org/shows/>
WBUR(NPR加盟ラジオ局) 毎日2時間を前半、後半2本の番組。ウンベルト・エーコ、ウォルター・クロンカイト、ジョン・マッケイン、ポール・クルーグマンなどなど。

■Fresh Air with Terry Gross
<http://freshair.npr.org/>
NPR(全米公共ラジオ局)の番組。音声のアーカイブ。サイト上の"Archived Shows"から過去の番組を聞くことができる。Gross女史の穏やかながら気の利いたインタビューが心地よい。俳優、ミュージシャン、作家、政治家、経済人、学者などあらゆる分野の著名人を招いてインタビュー。トピックやゲストの名前で過去のアーカイブが検索できる。好みの人物の名前をいれて検索してみると、思わぬインタビューが見つかることがある。

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<http://gaikoku.info/english/sessikata/6.htm>

【筆者プロフィール】
小田康之 GEO Global代表.詳細は次のページをご参照ください。<http://yasuoda.com>

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updated:2002.11.30