HOME |
メルマガ/vol.21
2002.08.02 |
||||
Contents
(1)「シンガポールの国会を傍聴してきました」 |
||||
みなさん、こんにちは。サンフランシスコの小田です。
米国では、今年は山火事が各地で大発生し、山々を焼き尽くし、人家にも被害をもたらしています。そんな燎原の火のごとく、不正会計に端を発した企業への不信感も激しく広がり、経済を直撃しています。 さて、今号、まずは、シンガポールにて研究調査を続けられている、勝間田さんによるシンガポール国会傍聴記です。カジュアルでリラックスした雰囲気の国会議員、討議が始まると一変。 2本目は、拙文で「英語とのつきあい方」についてです。今までとはちょっと違った趣向で、今後数回にわたり英語(ほかの外国語も出てくるかも)を学習するにあたって便利な辞書や新聞・雑誌、ウェブサイトなどを個人的な体験を交えてお伝えするつもりです。 小田康之(oda@geo-g.com) |
||||
────────────────────────────────────── ★「シンガポールの国会を傍聴してきました」 勝間田 弘(英国バーミンガム大学大学院・在シンガポール) ────────────────────────────────────── 6月、東京でのGEO会合では久しぶりに日本の皆さんと会話を楽しんでから、再びシンガポールへ戻ってきました。日本からシンガポールに来ると、やはり町がきれいですね。ゴミが落ちてなく、すべてが整っています。これは、政府の締め付けが強いからです。ゴミのポイ捨ては罰金の対象という法律をご存知の方は多いでしょう。 この国では1965年の建国以来、人民行動党という与党の一党支配が続いています。その強さは日本の自民党支配の比ではありません。シンガポールでは野党勢力がないに等しいのです。現在も100近くある議席のうち、野党は二席しか持っていません。 さて、こんな国の政治の中枢が国会です。町の真中に堂々と構えています。これ、外国人でも中に入り、本会議を傍聴することができるのです。必要なのはパスポートの呈示だけです。 現在シンガポールでは国会の会期中であり、私も先日、本会議を傍聴してきました。そこで、その時のお話をしたいと思います。 ▼カジュアルな国会議員たち 議事堂内に入ってまず驚いたのが国会議員たちの服装です。実にカジュアルなのです。ネクタイなしでシャツの襟を開けている人が多く、また、ゴルフにでも行きそうな格好の人もいます。日本の議員のように上着にネクタイと決め込んでいる人は、全体の四分の一くらいしかいません。 本会議が始まると、もっと驚くことがありました。会議中に議員の携帯が鳴り出したのです。始まる前に電源を切るのを忘れたのでしょうか、慌てて止めていました。 何ともリラックスした雰囲気です。どういう訳でしょうか。野党勢力がない状態だから、本会議なんて実質的には何もしない、どうでも良いものなのでしょうか。 ▼口角泡が飛ぶ政策論争 しかし、しばらく会議を傍聴してみると、そんな推測は間違っていることに気づきました。何といってもシンガポールの国会には議論があります。何もしていないなんてとんでもない、本会議では議員が政策を真剣に討議するのです。 議員の質問に担当の大臣が答えるのですが、そこには官僚の書いた原稿などありません。立て続けに出てくる質問に、大臣がその場で答える。それに対する反論が出て、さらに議論が続く。文書として用意されているのは最初の質問だけです。あとの議論には台本が一切ありません。 国会に野党勢力はなくても党内での政策論争があり、その場が本会議なのです。各議員は選挙区の代表であり、党の執行部に政策を訴えるのです。 全体の印象をまとめると、国会というよりも「会議」ですね。会社や学校で行われるのと同じ、会議です。格式ばったところもなければ、原稿もない。参加者が真剣に議論するのみ。本来の国会とは、こうあるべきなのでしょう。 これに対して日本の国会は、確かに議員たちの服装はきちんとしており、形式だけは整っています。しかし、実際の会議は官僚が書いた原稿を読むだけのもの。以前に私も傍聴したことがありますが、居眠りをしている議員がいて呆れました。これではいけません。日本は、シンガポールから学ぶべきところがあるようです。 なお、後で知ったのですが、カジュアルな服装はある意味で意図的なのだそうです。国家建設の父、初代首相のリー・クアン・ユーが始めたことで、政治家とは身近な存在だということを示すのが狙いだそうです。シンガポールの国会、ますます感心します。 【筆者プロフィール】 |
||||
────────────────────────────────────── 「英語とのつきあい方 (1)どのレベルを目指す?」 小田 康之 (GEO Global 代表・在サンフランシスコ) ────────────────────────────────────── 英語は、事実上の世界言語となっている。言語帝国主義だと叫んで、英語の跋扈に反対するのも良いが、それを訴えるのも多くの人が理解できる言葉でなければならない。その目的を果たそうと思えば、やはり英語を使わざるを得ないという矛盾にさえ陥るのだ。 英語の運用能力が、一国の経済やらその国の国際舞台での政治力に大きな影響を与えるようになっている。改めて言うまでもなく、アジアでも一国を挙げて英語能力の向上に努めている国も多い。その一方で、英語が第1言語の人々もいるわけだから、英語を母国語としない国の人間には、まことに不利な世界になってきている。 そんなの不公平だと嘆いて見たい気にもなるが、嘆いてみたところで始まらない。もともと世界の歴史は、言語にとって、そんなに公平なものではなかったし、グローバリゼーションの流れの中で、世界共通の言語の必要性は高まりこそすれ、衰えることはない。 こういった現実を直視した上で、世界と渡り合ってゆこうと思えば、その手段としての英語の運用能力を高めるしかない。 ▼到達目標を明確にすることが第一歩 そんな御託よりも、TOEICである程度の点数を取らないと、勤務先で昇進もできない、という切羽詰ったビジネスマン(ウーマン)もいるだろう。TOEFLをクリアしないと、留学できないという人もいるかもしれない。いずれにせよ、目的を具体化するのは、決定的に重要なことである。 外国語を学ぶことは、頂の見えない山に登ろうとするようなものだ。ひとつの言語は長い歴史を経て現在の形となり、そして変化を続けている。さらに、その言語の使われる世界のあらゆる事象を表現するものであるのだから、そうやすやすと微笑んでくれるわけはない。どのような言語でもその最終的な征服点など、見ることはできないのだ。 だから、英語とつきあう上での、まず第一歩は、自分にとってどのレベルの英語が必要なのかはっきりさせることだ。つまり到達目標を明らかにするということである。 到達目標を明確にしておかないと、底なし沼に足を取られるがごとく、ずぶずぶと深みにはまり、もがく苦しむこととなる。もっと良い教材があるのではないかと探し回り、自らの怠惰にあきれ、自分の記憶力の悪さを嘆き、果ては何でこんな馬鹿に俺を生んだのかと親を恨んでみたりする。 そんな不幸な人生を続けずとも済むように、自分に必要な英語力というものを、まずははっきりさせよう。そのレベルまで到達したら、とりあえずは目標達成として祝杯を挙げ、それ以上はあくまでプラスアルファだと考えよう。英語そのものを専門とする職にある人でもない限りは、精神衛生上そのほうが健全だ。 とりあえずの目標に到達したのちに、それ以上の英語力を必要とする場面に出くわしたら、辞書を活用したり、優秀な通訳に頼ったりするのだと割り切れば良い。それに、実際のビジネスなどの場面では、英語力そのもの以上に、当該の専門知識や積極性といったことが有効に作用することが多いのだ。 では、もしも英語が必要だという場合に、どのレベルの英語力を目指せば良いか。ここで対象とするのは、仕事で使える英語の能力としたい。専門の分野によっても異なるから、一概には言えないが、おおよその英語力の目安として、ここでは大きく次の3つのレベルに分けてみた。 ▼「仕事で使える」英語力 3つのレベル ■実用レベル ■上級レベル 繰り返すが、まず重要なのは自分に必要な英語のレベルをはっきりさせることだ。誰もが「上級レベル」や「最上級レベル」が必要とは限らない。もちろん少しでも高いレベルを目指すことは、立派なことだが、英語の学習に時間を割くよりも優先順位の高い事を抱えている人も少なくないはずだ。 ▼それぞれのレベルの内容は もし自分には英語が必要だと思えば、少なくとも「実用レベル」を目指すべきだろう。この「実用レベル」がないと、英語を仕事で使うことは難しい。学生時代にあまり英語の勉強には縁がなかった人は、このレベルに達するのにもかなりの困難が伴うだろう。 さらに、日本の外資系企業などである程度自由に英語を使って仕事ができるようになりたいというのであれば、少なくとも「上級レベル」は欲しいところだろう。ただ、このレベルの英語力を身につけるためには、かなりの学習時間が必要だ。留学などせずとも、「上級レベル」の英語力を身につけることは十分に可能だが、逆に言えば、留学したからといってこの段階に達するとは限らない。 「最上級レベル」となると少々ややこしい。このレベルになると英語能力を測る一般的な試験が見当たらない。英検の上を行くものとして、国連英検や通訳検定などというものもあるにはあるが、これらで必ずしも測れるようなものではない。到達点が計りづらく、胸突き八丁といったところだろう。 「上級レベル」と「最上級レベル」との間には、大きな能力的な差がある。「最上級レベル」を目指そうという人であれば、「上級レベル」の英語力がいかにあやふやで未熟なものかは重々承知のことだろう。 「上級レベル」であれば、日本の会社内では、英語のできる人ということで、大抵通用する。しかし、英語を母国語とする人間と対等に渡り合うような仕事を目指すのであれば、「上級レベル」では心もとない。もはや、TOEFLやTOEICといった非母国語者向けの英語試験での点数など役にたたない段階だ。 ▼ネットやPCの恩恵 インターネットやパソコンの普及は、外国語の学習にも画期的な恩恵をもたらした。実は、英語以上にマイナーな言語の学習に、より衝撃的な効果を与えた。 インターネットが普及する前、私はスペインに留学した。そこで、スペイン国営放送のラジオ番組をカセットテープに何本も録音し、日本に持って帰国。さらに、日本でもスペインのニュースを知るために、ヨーロッパから航空便で送ってくるスペインの新聞 El Pais の国際版を購読し、発行から少なくとも数日は遅れて届く薄い紙でペラペラの新聞を毎週心待ちにしていた。 ところが、インターネット時代には、こんな手間やタイムラグは全く無用となった。スペイン国営放送のラジオ番組は生放送でネット配信されているし、El Paisを含むスペインの主要紙は、コンテンツのほぼすべてをウェブで公開しているからだ。 さらに今までは、日本ではその音声を聞くことすら難しかったような少数言語でさえも、ネットではその音声や教材を手に入れることができるようになった。 マイナー言語に比べれば、従来から教材には、はるかに恵まれていた英語ではあるが、ネットの恩恵は計り知れない。 そんな英語の学習に役立つリソースを、次回以降紹介して行く。 ★次回以降、この連載では、英語の学習の役に立つ辞書、新聞・雑誌、ウェブサイ ト、ソフトウェアなどを具体的に紹介してゆくつもりです。 【筆者プロフィール】 |
||||
updated:2002.08.02
|
|||||||