<< 第6行程: 10月31日, 11月1日 - Burgos - Castrojeriz -Poblacio'n del Campo (66km) >>
(10月31日(日) 曇り→雨時々晴れ)
7:30
6時起床。そろそろ出発。まだ夜は明けない。今日は早起きだ。しかも36km。しかし早出、早宿が旅人の基本だ。
15:25
カスティーリャの荒野を歩くこと延々2時間。オンタナ Hontana は谷の合間にひっそりと隠れるようにしてあった。ゴミだらけで今にも崩れそうな石造りの家ばかりだが、こんな村にも小さいながらバルがあるのはスペインらしい。教会 Iglesia、広場 Plaza、バル Bar これらがある共同体に最低限必要な構成要素というところか。少し陽がさしてきた。よいことだ。
19:25
やっとカストロヘリス Castrojeriz の救護所に到着。シャワーを浴びてすっきりしたが、マノーロのためのお湯が残っていなかったのは悪いことをした。
久しぶりに他の巡礼者に会う。寡黙なじいさんだ。
巡礼の答えはその過程にあると思う。巡礼を人生にたとえることができるならその意義や行なう理由を説明するのはとても難しいだろう。生きる意味を日常そう考えることはない。同じように巡礼の意味を考えることも少ない。歩いているとき、話したり考えることといえばー
・次の町まであと何キロか。
・サンチアゴまであと何キロか。
・今日の救護所はどんなところだろうか。
・友達のこと、家族のこと。
・日本とスペインの比較(とくに女性について)。
・時々巡礼のこと。
・今までの自分、やらかした失敗などを振り返って。
・サンチアゴについたら、日本に帰ったらなにをしようか。
(11月1日(月) 曇り)
9:20
体のあちこちが痛い。まあ無理もない。
11:55
大きな丘をこえる。十字架がいくつも立っていた。十字架を通り過ぎるたびカトリックの巡礼の道を歩いているんだなぁと思う。十字架を背負って歩いているんだろうか、人は。巡礼が苦業なら人生は苦難の道なのだろうか。
14:35
久し振りにビールを呑む。さいこ。生きている実感というもの。でも腹を冷やさないようにしなきゃ。
今日はすばらしい天気。見渡すかぎり畑と青い、広い空。飛行機雲も長い。
17:00
フロミスタ Fromista のロマネスク式のSan Martin教会にいる。ロマネスク式はシンプルだが静かで落ち着ける。ゴシック式はいかにもカトリックらしく都市に似合う。
18:05
ポブラシオン・デル・カンポ Poblacio'n del Campo の救護所に到着。今日はマノーロと二人。もう陽も暮れる。今日も一日が終わる。くう、ねる、あるく、の毎日もこれで13日が過ぎるわけだ。
20:45
明日は40km近くあるとマノーロはいうが、まあ30km位だろう。天気がよいことを祈る。この救護所はとてもきれい。二人だし気楽だ。
<< 第7行程 : 11月2, 3日 - Poblacio'n del Campo - Carzadilla de la Cueza - Sahagu'n (54km) >>
(11月2日(火) 曇り→雨時々風)
8:00
昨夜買った牛乳が腐っていたので牛乳なしの朝食を食べ、そろそろ出発。
10:30
ビジャカサル Villacazar のバルに着く。今日は雨。しかも横なぐりの冷たい雨だ。最悪。風邪をひかないようにしなければ。たっぷり10kmは歩いたな。ガイドブックの距離は間違っている。
20:10
今日は一日雨風の中をひたすら3時間半歩き続けてカルサディージャ Calzadilla についた。まっすぐな道、あたりは360度荒野だ。ずーっと死の大地。刈り入れも終わっているからひまわりも死んでいる。巡礼が死地での旅だというのはこの場合あたっている。
さてカルサディージャはまたしても坂の下に隠れるようにしてあった。バルも閉まっているし、店もない。救護所は悪くないが腹が減った。まあ熱いシャワーも浴びたし、洗濯物も干せた。さいわいスープとお菓子がある。水も残っている。なんとかなりそうだ。今日は他に2人スペイン人の男女がいる。さっきはとなりでベッドがきしんでいた。なにしてんだか...。
22:10
さっきまでずっと宗教談議。マノーロは信仰心あるカトリック。ジョルディは無神論者。この2人に接点はない。いくら話してもキリがない。それでも仲がいいのが面白い。もう一人のスペイン人ミゲルは俺と少し考えが似てる。こうゆうのがあるから旅はいいよなあ。結局スープとお菓子だけで夕食は終わった。それでも生きていけんだからそこが面白い。価値観がゆらぐかと思えばそうでもない。なにか神懸かりの力がつくかといえばそうでもない。予想と現実は違うもんだ。
(11月3日(水) 雨時々曇り→曇り時々晴れ)
8:30
今日も雨だ、ちくしょう。
9:30
朝めしは抜きだ。サアグン Sahagu'n まで20kmほど。3時にはつけるだろう。
13:00
バルがない。どこにもない。少し買い物をしてテラディージョスTerradillos の救護所で食事。今日は5人(マノーロ、ジョルディ、ミゲル、ティナ、私)で追いついたり、追い越したりの繰りかえし。ここサンニコラス San Nicola's でみんなで一休み。あと6kmでサアグン Sahagu'n だ。ついに15日めにして中間地点をこした。残るは363kmだ。ここまでは雨が3日に1日は降ったが、順調だった。後半もこうであることを祈る。
14:50
サアグン到着。やっと町らしい町についた。レストランの姉ちゃんもきれいだし。
16:20
救護所も郵便局も銀行もスーパーも売店も教会もみーんな閉まっている。忍耐が必要だこの国は。
17:45
デンマーク人の大学生の女の子が2人、自転車で救護所に到着。ジョルディもミゲル、ティナも追いついた。また宗教談議が始まった。英語を使っていろんな国の人と話したが、アメリカ、イギリスの人とよりも非英語圏の人と話すことの方が多かった。でもよかった。いろんな人と話せてよかった。これでこそ英語を勉強してきた意味があるというもの。
21:00
今日は少しつかれている。どうやら風邪気味だ。いろいろと話したいんだが健康が第一だ。休もう。
<< 第8行程 : 11月4, 5日 - Sahagu'n - Mansilla de las mulas - Leo'n (56km) >>
(11月4日(木) 曇りのち晴れ)
7:50
風邪もなおりそう。よかった。しかし昨日はへんな夢をみた。まあいい。今日は35km歩かにゃならん。Animo!だ。
10:30
並木道をずっといく。今日は5人一緒だ。暑くもなく、寒くもなく、風もない。今日は歩くにはいい日だ。スペインにも紅葉はあるが赤(紅)くない。黄色だ。黄葉ってところか。しかし今はもう葉も落ち、街では街路樹の枝を切り落とし冬支度しているのが見られる。
12:40
巡礼の主人公は名もない幾百万の巡礼者達だ。それだけは確かだ。
昼食後、また議論が始まった。ギロンしているうちに時間は過ぎちまうぞ。太陽はまってくれない。
16:50
すばらしい午後。ついに子供の頃からの夢が叶った。地平線に向かってまっすぐな一本の道。今日はこれに並木のおまけつきだった。真青な空はどこまでも青く高い。まわりは360度まっさら平らな大地。地面は芝生を敷いたようにやわらかく、足は快調に進む。さえぎるものは何一つない。これこそ自由というもの。最高だ。
21:00
今日はよかった。しかしこの体調はまずい。腹の調子がおかしいし、風邪をひいたようだ。あしたはレオン Leo'n でゆっくり休養をとって旅を続けられるようにしよう。健康が第一だ。
(11月5日(金) 雨のち曇りのち晴れ)
9:00
腹がいたい。風邪気味。雨も降ってる。でも幸いにもあと15kmで大きな都市、レオン Leo'n に着く。
20:40
今日という日は最悪だったが友達の有難さを知った。もうろうと歩き続けてレオンについたはいいが、マノーロ、ジョルディと別れて銀行で両替しにいったら一時間も待たされたうえ「すみません」の一言もない。そのあと街中で迷う。俺にしては珍しいことだ。腹はグルグルいってるし、さみしいやらひもじいやら。ここは救護所もないし体調が悪いので安ホテルに落ち着いたのちカテドラルにいったらやっとマノーロに会えた。友達とは有難いものだ。明日また一緒に歩けるよう今日はゆっくり休もう。