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メルマガ/vol.33
2002.12.27
Contents

(1)「Vital(バイタル)−世界を相手にするプロフェッショナルのネットワーク」
小田 康之(GEO Global代表・Vitalオーガナイザー)
(2)「ピースボート周航記(5)イースター島 モアイの顔の秘密」
渡辺 真帆(コミュニケーション・コーディネーター)

みなさん、こんにちは。

 このメルマガの配信も今年最後となりました。GEO Globalでは、今年一年オフラインでのコロキウムなどの活動は回数が少なめでしたが、来年はまたギアーをシフトし直し、パワーアップして活動を進めたいと思っています。

 今号では、サブグループ Vitalについてのご紹介と、渡辺真帆さんの連載「ピースボート周航記」のイースター島での模様をお伝えします。

小田康之(oda@geo-g.com

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★「Vital(バイタル)−世界を相手にするプロフェッショナルのネットワーク」
小田康之(GEO Global代表・Vitalオーガナイザー)
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 このメルマガでもお伝えしたとおり、GEO Globalのサブグループとして、Vitalが11月に発足しました。

世界を相手にするビジネス・政策プロフェッショナルのネットワークとして、その勉強会では、さまざまな分野について英語での討論を行っています。

先日、12月15日(日)には、「石油とエネルギー」をテーマに取り上げ、英語と日本語での議論を繰り広げました。ビジネスの一線で活躍している若手のプロフェッショナルやジャーナリストなど多彩な23名が参加し、たいへんな盛り上がりでのスタート。勉強会の様子や配布資料などは次のURLでご覧いただけます。
<http://gaikoku.info/vital/record/2/20021215.htm>

オンラインでは、メーリングリストも開設し、情報の交換も行っていますので、ご興味おありの方はどうぞご参加ください。
<http://www.egroups.co.jp/group/vital-japan>


1月のVital勉強会では、中国の政治体制とビジネスについて取り上げます。

◆日時:2003年1月25日(土) 6:30-9:00pm (開場 6:00pm)
◆会場:東京・千代田区 内神田社会教育会館 第3集会室(8階)
◆交通:JR神田駅(西口)下車徒歩5分、地下鉄大手町駅(A2出口)下車徒歩5分
◆参加費:300円(会場代、飲物代、資料代等)
◆内容: 参加者の自己紹介(英語)
オーガナイザーによる概要説明・問題提起(英語)
     前半、テーマに関する討論(英語)
     後半、補足討論(日本語)
◆テーマ:「変わる中国政治体制−中国とのビジネス」(仮題)

行事の詳細や、参加申込みは次のURLからどうぞ。
<http://gaikoku.info/vital/event.htm>

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★「ピースボート周航記(5)イースター島 モアイの顔の秘密」
渡辺 真帆(コミュニケーション・コーディネーター)
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11月5日(火)

 天候のあまりの悪さに上陸が危ぶまれていたのだが、早朝4時頃、ピースボートは無事にチリのイースター島沖に到着。イースター島には船が直接着けるような港がなく、船から6人乗りほどの小さなテンダーボートに乗り換え、それで上陸することになっている。7時半くらいからグループ分けをされたお客さん達が順番にテンダーボートに移り、モアイ達の待つイースター島へ乗り込んで行く。

 毎回どのクルーズでもイースター島に上陸するのが一番難しいと言われているそうで、スタッフも早朝から皆緊張した面持ちである。何が大変なのかと言うと、船からテンダーボートに乗り移る時に波が大変荒いので、怪我をする人が非常に多いのだそうだ。ピースボートのウクライナ人スタッフと、現地スタッフとピースボートスタッフ総出でテンダーボートに乗り移るお客さん達を監視するが、何度注意をしても乗り口やテンダーボートの脇に手をかけてしまう人がいる。荒波でボートが跳ねあがった時にその間に手や足を挟んでしまうと言うのが一番怖い怪我だそうで、事実前回のクルーズの時に、お客さんを助けようとしたスタッフの一人が中指を挟まれ、指がなくなってしまったのだそうだ。

 とりあえず全ての乗客が無事にイースター島に上陸し、ついにモアイとご対面である。今日私が通訳で入るのは、Bコースの“絶海の孤島で海水浴”というツアー。モアイがたくさん見られる場所を訪れた後に、モアイに見守られながら美しいビーチで海水浴、というモアイ満載のコースである。イースター島にはあまり他には見るものもないと言うことで、必然的にこのようなコースになったようだ。

 テンダーボートを降りた所で待ってくれていた車に乗って、まず始めに7体のモアイが海を見つめて立っているアフアキビという場所に向かう。車を降りた所で今日のガイドさんであるオクタビアというお腹のでっぷりした褐色の肌のおじさんに会う。“はじめまして、今日はよろしくお願いします”と挨拶をして握手をするが、おじさん、ニコニコとしているだけであまり反応がない。ただニコニコ、ニコニコと笑顔で突っ立っている。なんだか嫌な予感がする。私達CCはいつも現地のガイドさんと直接に関わるので、寄港地に着いた時にはどんなガイドさんに当たるのか、毎回ドキドキする。英語が上手で、しかもガイドの上手な人に当たる時はラッキーなのだが、なかなかそのような人にめぐり合うのは難しい。今日はどうなることやら。

 アフアキビの7体のモアイ達についての説明をして欲しかったのだが、予想通りオクタビアはモアイについてほとんどな〜んにも知らずに、モアイの前に立ってただニコニコと笑っている。「なんで海の方向を見てるんですか?」「どうして7体しかないんですか?」などとお客さんから当然のような質問が出て来るのだが、オクタビオ、「うーん、よく知らない。あれ、モアイだよ、モアイって言うんだよ」と言って笑っている。始めはふざけているのかと思ったけれど、どうやら本当に分からないらしい。仕方がないので自分で用意してきた資料を急いで読んでなんとかその場を凌いだのだが、全くもって腹が立つ。次の目的地であるラノララクに向かう途中でオクタビオに、「どのくらいガイドの仕事をしてるの?」と控えめに聞くと、自信たっぷりの笑顔で「先月から」と言う答えが返ってきた。なるほど。

 ラノララクは“モアイの工場跡”と呼ばれている場所で、山の中の切り立った岩には今でもモアイをくり貫いた跡があり、作りかけの横向きになったモアイや、直立したモアイ、ピロピロと言う名前の正座したモアイなどなど、計390体ほどのモアイがゴロゴロと転がっている。ここでもオクタビオはニコニコしているだけなので、諦めて自分で調べてきたモアイ情報をお客さんに話すことにした。モアイは12〜15世紀に一番大量に作られていたようで、当時支配的な立場にあった耳長族が、短耳族に命令して作らせていたようだ。当時のイースター島には人口も7,000人ほどおり、部族間抗争が絶えなかったと言う。

 大したガイドができないので、お客さんが怒っているのではないかとハラハラしていたが、皆モアイの写真を撮るのに夢中であまり気にしていないようである。私も初めて見るモアイにすっかり魅了されて、思わず足を止めてモアイの顔を下からじぃ〜っと見上げてみた。当時はモアイの目の部分にサンゴや赤い石を使っていたということだが、今は目の部分は平らになっている。それにしても面白い顔をしている。どうしてイースター島の人達は大事なモアイをこんな顔にしたの
だろう。不思議だ。

 次に向かったアフトンガリキでは“アフ”という石の祭壇の上に聳え立つ15体のモアイとご対面。ここのモアイ達は長い間、嵐の時になぎ倒されてしまったままになっていたのだが、1992年に日本のクレーン会社、タダノの考案によって再び祭壇の上に立てられることになった。チリと日本共同のプロジェクトと言うことで、3年間かかって15体全てのモアイを元通りにしたそうだ。ちなみにアフトンガリキの隅の方には、1970年の大阪万博で披露された一体の小柄なモアイもちょこんと立っている。 モアイをたっぷりと見学した一行はアナケナビーチに向かい、そこで船から支給されたお弁当を食べて、海水浴の時間になった。このビーチの側にもモアイ達がど〜んと立っているのが面白い。肌寒くてあまり海水浴に適した天気ではなかったけれど、お客さん達はみんな歓声を上げて嬉しそうである。スタッフは海水浴はできませんと言われて、私はお客さんの監視をしているふりをしつつ、ちらちらとモアイを見て過ごした。このビーチに立っているモアイ達は、心なしか他の場所のものよりハンサムな顔をしているような気がする。あごも少し短めだし。気のせいかしら。

 船に戻るためにテンダーボート乗り場に着くと、地元の人達がたくさんのおみやげを広げて売っているのが見える。ほとんどがモアイグッズなのだが、本物の石でできた巨大なモアイなんかも売っている。私も何か買おうと思いうろうろと迷った挙句に、ぎょろぎょろした目玉の付いたモアイピアスを買うことにした。今思うとどう考えても勢いで買ってしまったとしか思えない代物なのだが、なんだか無償に嬉しくて、その場で早速着けてみた。

 お客さんと帰りのテンダーボートに乗りこむと、みんな手にたくさんのおみやげの袋を持っていて嬉しそうである。「楽しかったですね〜」などと言いつつ、ふと現地の船頭さんの顔を見ると、なんとびっくり。顔がモアイにそっくりなのである。目の辺りの窪み方も、あごの長さも、見れば見るほど似ているような気がする。思わず「これがモアイの顔か・・・」とつぶやくと、その若い船頭さんは不思議そうな顔をしてニコっと笑った。


【筆者プロフィール】
渡辺 真帆
神奈川県、横浜市出身。99年秋に渡米。今年5月にサンフランシスコ州立大学、ジャーナリズム学科を卒業後、帰国。在学中から日系新聞社、日米タイムズで英文記者として様々な分野の記事を書く。現在は船で世界一周の旅をするNGO団体、ピースボートの第39回クルーズに通訳スタッフとして乗船しており、洋上で通訳業に奔走する日々を送っている。
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updated:2002.12.28